キャップ ロワイヤル / ボルドー シューペリウール フュ ド シェーヌ (フランス/ボルドー)
キャップ ロワイヤル / ボルドー シューペリウール フュ ド シェーヌ 2018(赤)
VT:2018
生産国:フランス
生産地:ボルドー
葡萄品種:メルロー70、カベルネ ソーヴィニヨン30
コメント【商品説明】:
ピション ロングヴィル バロンが造る?反則技。
正確に言うと、ピション ロングヴィル バロンなどのワイナリーを所有するAXAミレジムの子会社「コンパニー メドケーヌ デ グランクリュ」が作っています。「メドック格付け第二級のシャトー・ピション・ロングヴィル・バロンの技術責任者ジャン=ルネ・マティニョンが手掛ける」って書いてはありますが、ごにょごにょごにょっとした部分を感じてしまうワインです。もちろん、いい意味で。
日本にこのワインが入ってきた時、それはもう衝撃でした。2010年がファーストヴィンテージだったと記憶しています。この値段でピション バロンがこれやっちゃったら他が迷惑だよって思ったのがつい先日の様です。このワインを紹介しない手は無いと、その頃カジュアルなお店でソムリエをいていた僕は、ひたすらコルクを抜いてはグラスに注いでを繰り返し、30席ほどの小さなお店でしたがピーク時には月に8ケース=100本弱販売しておりました。
登場から2年ほど経つと、量販店でも見かけるようにもなったのですが、最近は少し落ち着いてきたようなので今更ながらご紹介です。
まず、香りが良いです。樽由来と酵母由来のアロマが混ざり合い、この価格帯のワインらしからぬ風格を持ち合わせます。〇〇の香りがとか言う表現としては「高級ワイン」の香りがするって言うのが一番ぴったりくると思います。ラベルにもフュ ド シェーヌ(樽使ってるよ)と書いてあるのですが、この価格のワインでそんなに樽使ってたら採算取れないんじゃないかて余計なお世話も甚だしい心配をしてしまうくらい、はっきりとした樽香。ってとこで想像してしまうのが、樽ではなくて「バトン」と呼ばれる角材や、木のチップ、更にはおがくずなんかをステンレスタンクに投入して樽の香りを調味料的につけているのでは無いかという事。
バトンの使用はフランス国内では法律的に禁止されていますが、輸入された当時「日本向けに作られた」という触れ込みだった事から、このワインはバトンかな?って僕も推測をしておりましたが、どうやらキャップロ ワイヤルのホームページによると、フランスでも販売しているみたいなんです。フランスのワインコンクールで金賞受賞してたりもしてましたので、どうやらホントに樽を使っているようです。
「ワインに関する法律が一番厳しいのがフランス、でも、一番法律を守らないのもフランス」なんて事を言ったりもしますが、信じる信じないはあなた次第。でもまあ、美味しいならば良いじゃないかと気を取り直してワインに目を(鼻を)向けると、樽の香りははっきりしても、そのボリュームがいやらしくなく、むしろ樽香は付け過ぎて化粧っ気が強いという事もなく、とても良いバランスです。バトンで樽香を付けているワインは「お金そんなにかからないし、どうせなら思いっきり樽の香り付けて高く売っちゃおうぜ」って思惑が見え隠れするものが多いですが、このワインにはそんな兆候は見られません。そして、その疑惑の樽香に共存するボルドーの格式ある酵母由来の複雑な香りがあってこそ、アロマは初めてブーケとなり得るのです。
表記がポイヤックでは無いので、葡萄はポイヤックでは無いとは思いますが、酵母はポイヤックの、特にピション ロングヴィル バロンの畑から培養された酵母を使っている可能性が高いでしょう。培養酵母なんて書くと、自然派ワインの愛好家の方がページを閉じてしまいそうですが、これはボルドーでは…というか、ワインでは一般的な事でして、ワイン醸造学の権威、ボルドー大学には酵母の培養専門のファクターがあるのです。その土地の土壌の変化と同じように、その土地に昔から根付く酵母は培養して保存しなければ簡単に変質していきます。そうなってしまうと、ワインの味もがらりと変わってしまう可能性すらありますから、培養酵母の保存保管仕様は必要ですよね。
長くなりましたが、結論として僕がお伝えしたいのは「気軽な家のみのボルドーワインはこれで十分ですよ」と言う事です。お客様をおもてなしする為に、高級なボルドーの格付けワインが必要な日や、熟成したワインが飲みたい日には向かないかも知れません。でも、そうでないのなら飽きるまでこのワインを飲んでみるのも悪くないなと本気で思います。ポジティヴにこのワインと向き合うと、ほら、ラベルがピション ロングヴィル バロンに見えてきたりしませんか?
飲んだ事が無い方がいらしゃったら、まずは何かのついでに一本お試しでいかがでしょうか。