【ビオディナミ誕生100周年!】

1924年の6月、人智学を探求した哲学者のルドルフ・シュタイナーさんが、「農業講座」の中で提唱し、この世の中にビオディナミと言う概念が誕生してからちょうど100年。ちょうど100年ですが、世の中がお祭り騒ぎになっていない事に不思議を感じる方はいらっしゃいませんか?

 

「ビオ」と単語は既にワイン業界では知らない人はいないくらいに浸透していますから、もう少し話題になっても良いのかなと思うのですが、ビオワインを飲むこと、売ることに興味がある方は多くても、ビオディナミの農法自体にはあまり興味がない方が多いんですよねきっと。

 

それもそのはず、ルドルフ・シュタイナーさんが提唱したビオディナミは、宇宙の話、占星術、妖精さんの介入、4つのエレメント等、実態のつかめない要素がたくさん含まれていて、それを実践するにはそれこそ自分が妖精さんと直接会話でも出来ない限り実現不可能な状態。しかもその翌年、1925年3月にシュタイナーさんお亡くなりになります。謎が謎のまま、農業の効率化を目指したナチスドイツが取り入れようとチャレンジしますが、謎が謎を呼び「こんなの非効率でやってられるか!」と、ビオディナミだけでなく人智学自体も封印されてしまいます。なので、100年前の段階ではビオディナミって概念は生まれましたが、シュタイナーさん以外にはチンプンカンプンな状態だったという事で。

 

そして時は流れ、ついに現れるのですね、シュタイナーさんが遺言の様にこの世に残していったビオディナミ農法を実践する方が。その名はマリア・トゥーンさん。彼女は「そのままでは何をやったら良いかわからないから、仮説を立てて手あたり次第やってみるか作戦」で次々と正解を導き出します。

 

人智学というオカルト的ともとられかねない哲学者の提唱した農業の仮設を、農業の専門家として、他の農業家が見てもわかりやすいように定義付けしていきます。ただ、シュタイナー農法とも呼ばれるビオディナミを言語化できても、なんでそんな事をすると効果があるのかって所を説明しようとすると、妖精さんのおかげでとか、そういった事も平気で盛り込まれますから、これが広く浸透するには至らなかったのが現実です。

 

でも、マリア・トゥーンさんが「シュタイナーさんが言いたかったのはこういう事かもよ」って事でまとめた、ホメオパシーの考え方と、種まきカレンダーと呼ばれる月の満ち欠けと共に行動するという部分は、現在のビオディナミに無くてはならないものとなっています。と言うか、マリア・トゥーンさんが不屈の闘志でルドルフ・シュタイナーさんが残した謎を長い年月かけて解明しなければ、現代でビオディナミ農法なんて誰も実践できなかったんじゃないかなって思うくらい。

 

で、ここで問題になるのは、農業におけるビオディナミと、ワインにおけるビオディナミは必ずしも一致しないという事なのですが、ややこしくなるので一旦そこは置いといて。

 

僕は、ビオディナミのワインの中には好きなものも苦手なものもありますので、ビオワインなら何でも大好き!って方にはワインをご紹介する資格がないって思っていまして、お店の中ではビオディナミについてあまり触れないようにしているのですが、先日目にしたオルヴォーさんのワイン説明にマリア・トゥーンさんのお名前をみつけてしまい、懐かしくなって少し書いてみました。

 

ビオでもビオじゃなくても、ワインは美味しければ何でも飲みますし、輸送と保管の状態が良ければ、世の中のワインはだいたいが美味しく楽しめると思っているのが僕ですが、ビオの良い所はその豊富な要素を、何物にも邪魔されずにストレートに楽しめるところかなと。

 

「人って7年周期で体を完成させるから、63歳でその頂点を迎えるよね」が持論のルドルフ・シュタイナーさん自身が63歳の時に提唱し、正解の無いなぞなぞの様にこの世に残したビオディナミは、マリア・トゥーンさんが仮説を立てて試験を繰り返し、ある程度の言語化に成功した後、ワイン業界では何人もの「ビオディナミの神様」が現れては更なる仮説を立て取り組み、信じる仲間に伝えられ今に至ります。なので、派閥的なものが生まれ、師匠によっては解釈が異なるというのが現実です。

 

まだ、100年しか経っていませんし、今の一般的なビオディナミがルドルフ・シュタイナーさんの伝えたかった正解かなのか、はたまたマリア・トゥーンさんがそれを再現出来ていたのか、ひょっとしてマリア・トゥーンさんはルドルフ・シュタイナーさんを当時既に超越してしまっていたのではないかとか、考え始めたらきりがないですし、その辺はがワインよりも面白い可能性がある神秘的な領域なのですが、僕の人生の残り時間ではそれを探求するには短すぎてしまうので、あまり深くに足を踏み入れないように気を付けています。面白過ぎて、止まらなくなるのが怖いんです。

 

美味しいワインを飲んでるくらいが丁度良いですよね。どうか皆様もお気をつけて。

 

誰得だよってお話ですが、僕の備忘録もかねて。

 

ビオディナミやシュタイナー農法、マリア・トゥーンの活躍が気になって眠れないよって方の為に、僕がビオディナミについて一番理解する事が出来た、植物の気持ちがわかる大学教授 板野肯三先生のYoutubeチャンネルのリンクを張っておきますね。

【KOZOの超植物チャンネル】

https://www.youtube.com/@kozo_itano

ここから先は沼ですからね、自己責任でお願いします。

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