ブルゴーニュもボルドーも、2012年から継続して影響していたミルランダージュという結実不良が続いていました。花ぶるいとも呼ばれるこの症状、病気的な扱いにはなりますがワイン用のブドウにとってはポジティヴに影響します。
萌芽や受粉のタイミングがずれる事で、早めに育つ果実が現れ、後から育つ果実が膨らむスペースが無くなり、小さな実のまま熟すのです。結果的には大きな粒と、小さな粒が混ざった房となります。通常の房よりも小粒が多いと言う事は、液体に対して皮の量が多くなると言う事。
これは、本来であれば良いお天気で太陽をたっぷり浴びる事で、その紫外線から果実(の中の果肉と種子)を守るため、果皮が厚くなることで得られる効果であり、ブドウを絞った時の果汁に対して皮が多いと言うのは、ワインになった時のタンニンの量を左右します。で、そのタンニンは風味的な要素となるだけでなく、抗酸化作用となりワインがゆっくりと熟成する為に必要な要素にもなるんです。
根により地中から吸い上げる養分に限りがあるとするならば、果実が小さい事でその果汁に貯め込まれるミネラルの量も多くなり、樹上の房を減らし収量を制限するのと同じような効果もあると仮定されます。
もう、良いことずくめなんですね。
でもその反面、小粒であるという事は果汁の液量が減る事でもあり、出来るワインの量が減れば売り上げに直結しますから、造り手としては少し頭を悩ませる要素でもあります。
しかし、2015年は全体的な収量も多く、その心配もありません。
そして更に2015年がそれまでの数年と圧倒的に違った要素として、極度の乾燥があげられます。雨が降らなかったんですよね。フランスでソムリエをする友人が「カズさん、今年はやばいです。雨が降りません。このままいくと最高のワインになるかも知れません」と興奮気味に電話をかけて来たのがまだ夏前。
そこから「まだ降りません」「まだ降りません」と頼んでも無いのに楽しそうに連絡をくれて、現地のワイン関係者の興奮を年間通して感じる事が出来たのがついこの間の様です。
結果的に収穫を迎える秋まで乾燥は続き、春からずっと良い条件が揃っていたので生産者はしっかりと準備をし、生涯の全てを注ぎ込み素晴らしいワインを造るのだと意気込んだ人も多かったのでしょう。
全ての好条件がそろった2015年、すぐに飲んでもそのポテンシャルの高さは全ての飲み手に伝わるものでしたが、そういった最良のヴィンテージの特徴のひとつは「長く熟成に耐える」事でもありますから、熟成が徐々進んできた今、その楽しみい方は広がる一方なのです。
その後、ブルゴーニュは2017、2018、2019、2020年、ボルドーは2016年、2018年、2020年とタイプは違えど良い年が続きました。断続的な良い年のスタートラインであった2015年が、ひとまずの飲み頃を迎えつつあります。
これ以上熟成すると、お値段もとめどなく上がっていきますから、手に入れるのはお早めに。
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